前回は、Kubernetes 向けのクラウドネイティブなデータ・プラットフォーム Portworx Enterprise のデータ保護機能であるスナップショットと同期/非同期レプリケーションによるディザスタ・リカバリについてご紹介しました。
Portworx のデータ保護機能:Kubernetes 環境のデータを止めずに守る
2026.08.04 投稿者:安部 諒
Portworx Enterprise のデータ保護機能であるスナップショットと同期/非同期レプリケーションによるディザスタ・リカバリをご紹介します。Kubernetes 環境におけるデータ損失のリスクを低減し、障害時の迅速な復旧を実現する方法を解説します。
今回は、Portworx が提供するバックアップ・ソリューションである Portworx Backup(以下、PX-Backup)をご紹介します。
Kubernetes 上でステートフルなアプリケーションを運用する場合には、ストレージ内のデータだけでなく、Deployment や ConfigMap、Secret などのアプリケーションを構成する Kubernetes リソースまで含めてバックアップ/リストアが可能かどうかが、運用効率を大きく左右します。
PX-Backup は、ネームスペース単位で「ストレージ内のデータ」と「Kubernetes リソース」をまとめてバックアップ/リストアできることが特長です。
なお、PX-Backup は Portworx Enterprise とは異なるソフトウェアです。ライセンスが異なりますのでご注意ください。ライセンスに関しては、こちらのブログをご覧ください。
2026.05.08 投稿者:戸田 貴夫
Portworx は、Kubernetes 向けのデータ基盤です。コンテナや KubeVirt などのモダンな仮想化向けに、ストレージ、データ保護、DR、バックアップを統合的に提供し、コンテナ時代に最適なデータ管理を実現します。
従来型バックアップとの違い
従来型バックアップにおける主な課題と、PX-Backup によるバックアップの特長を以下に示します。
従来型バックアップの課題
- アプリケーションの YAML とストレージ内のデータを、個別にバックアップする必要がある
- アプリケーションとストレージで、バックアップの手法をそれぞれ検討しなければならない
- バックアップ先のストレージも、YAML 保存用とデータ保存用でそれぞれ用意し、管理する必要がある
PX-Backup によるバックアップ
- アプリケーションの YAML とストレージ内のデータをまとめてバックアップ
- スケジュールを設定し、定期的なバックアップを自動化
- バックアップ先のストレージを 1 つに集約
- GUI によるシンプルなバックアップ管理
- バックアップ先として、オブジェクトストレージまたは NFS ストレージを使用

アプリケーションとデータを個別に管理する複雑さを解消し、バックアップ運用全体をシンプルにできる点が、PX-Backup の大きな価値です。
PX-Backup のサポート環境
PX-Backup は、主要なパブリック・クラウドのマネージド Kubernetes サービスから、オンプレミスの Kubernetes ディストリビューションまで、幅広い環境をサポートしています。
対応する Kubernetes ディストリビューション、バックアップ先として利用可能なストレージ、バックアップ対象となる主なリソースは次のとおりです。
Kubernetes
ディストリビューション
- AKS
- EKS
- GKE
- IKS
- OpenShift Container Platform(OCP)
- Rancher
- Tanzu Kubernetes Grid Service(TKGS)
- その他の Kubernetes ディストリビューション
バックアップ先のストレージ
- AWS S3
- S3 互換のオブジェクトストレージ
- FlashBlade Object
- Azure Blob Storage
- Google Cloud Object Storage
- NFS
- EFS
- GCP Filestore
- Azure File Share
- FlashArray/FlashBlade の NFS
バックアップ対象のリソース
- ClusterRole
- ClusterRoleBinding
- ConfigMap
- CRD
- DaemonSet
- Deployment
- Ingress
- PersistentVolume (PV)
- PersistentVolumeClaim (PVC)
- Role
- RoleBinding
- Service
- Secret
- ServiceAccount
- StatefulSet
このように、幅広い Kubernetes リソースがバックアップの対象となります。Kubernetes 標準のリソースだけでなく、OpenShift 固有のリソースである Route などもサポートされています。CRD(Custom Resource Definition:カスタム・リソース定義)やカスタム・リソースも、バックアップ/リストアの対象に含めることができます。CRD の例としては、ApplicationBackup という、バックアップ・ジョブそのものを定義するものが挙げられます。
また、PX-Backup は KubeVirt で構成された仮想マシン(VM)のバックアップにも対応しています。コンテナと VM が混在するモダンな Kubernetes 環境においても、単一のバックアップ・ソリューションで対応できる点は、運用上の大きなメリットです。
リストアにおける既存の方式との違い
PX-Backup は、バックアップと同様に、リストアにおいても従来型の方式と大きく異なるアプローチを取ります。
従来型リストアの課題
- リストアの手順を事前に確立しておく必要がある
- ストレージとアプリケーションを個別にリストアするため、複数の手順が必要になる
- 手順が多いことで、対象アプリケーションが多数ある場合には、リストアに時間を要する
PX-Backup によるリストア
- アプリケーションとストレージを一括でリストア
- GUI からアプリケーションを選択するだけで、少ない手順でリストアを実行
- バックアップ対象とは別のクラスタを PX-Backup に登録しておくことで、アプリケーションの移行にも利用可能

柔軟なリストア先の選択
PX-Backup からのリストアでは、リストア先を柔軟に選択できます。
- 元のネームスペースへの上書きリストア
- 別のネームスペースへのリストア
- 別のクラスタへのリストア

この柔軟性により、障害発生時の復旧だけでなく、環境の複製やクラスタ間でのアプリケーションの移行にも応用できます。
VM 内のファイルを指定したリストア
PX-Backup では、VM 全体のリストアに加え、取得済みの VM バックアップから特定のファイルやフォルダのみを指定してリストアすることも可能です(現時点では、Linux VM で対象の VM が起動中である場合に限り、同一 VM へのリストアに対応)。バックアップ元とは異なるディレクトリへのリストアにも対応しており、誤って削除または変更されたファイルのみを迅速に復旧できます。

GUI による一元的な運用管理
PX-Backup の操作は、バックアップの作成からスケジュール設定、ダッシュボードでの状況確認、リストアの実行まで、全て GUI 上で完結します。
- 事前にバックアップ/リストアの対象となる Kubernetes クラスタを PX-Backup に登録
- バックアップ・スケジュールを作成し、定期的なバックアップを自動化
- ダッシュボードから、バックアップの実行状況やジョブの結果を一覧で確認
- リストアの操作画面から、対象のリソースを選択してリストアを実行


さらに、バックアップの前後にプリスクリプトやポストスクリプトを設定することで、データベースなどのアプリケーションに対して整合性を保ったアプリケーション・コンシステントなバックアップを取得できます。一部のデータベースについては、公式ドキュメントにスクリプトの例が用意されています。
まとめ
PX-Backup は、Kubernetes アプリケーションを構成するリソースとストレージ内のデータをまとめてバックアップ/リストアできるため、これまで個別の手順を要していた運用を大幅に簡素化します。
- アプリケーションとストレージをまとめてバックアップ/リストアすることで運用手順を一元化し、バックアップ先のストレージを集約
- 主要なパブリック・クラウドのマネージド Kubernetes サービスからオンプレミス環境まで、幅広くサポート
- コンテナだけでなく、KubeVirt で構成した VM のバックアップ・ファイル単位のリストアにも対応
- 元のネームスペースへの上書きリストアに加え、別のネームスペースや別のクラスタをリストア先として選択できるため、柔軟な復旧や移行シナリオに対応可能
- 全ての操作を GUI で完結できるため、運用者の負担を軽減
コンテナと VM が混在するモダンな Kubernetes 環境において、PX-Backup は、バックアップ/リストアの幅広い要件に対応し、複雑になりがちな運用をシンプルにするソリューションとなります。
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