Kubernetes 上でデータベースなどのステートフルなアプリケーションを運用する場合に、最初に解決すべき課題が「永続ボリューム(PersistentVolume、以下 PV)をどう用意するか」です。既に FlashArray または FlashBlade を利用されている環境では、その第一歩は無償で始められます。これを可能にするのが、今回ご紹介する Portworx CSI です。
Portworx CSI(以下 PX-CSI)は、FlashArray、FlashBlade、Everpure Cloud Dedicated(旧 Cloud Block Store)を Kubernetes に接続するための CSI(Container Storage Interface)ドライバです。FlashArray/FlashBlade 向けには、追加費用なしでご利用いただけます。(Everpure Cloud Dedicated での利用条件については、ご契約内容をご確認ください。)「まずは既存の Everpure ストレージをコンテナ基盤につないでみたい」場合の最初の一歩として、PX-CSI は最適な選択肢となります。本記事では、PX-CSI の概要と、Portworx Enterprise へのステップアップについて解説します。
PX-CSI とは?Portworx ラインナップにおける位置付け
本記事では、Portworx 製品のうち、主に PX-CSI、Portworx Enterprise、Portworx Backup(以下 PX-Backup)の 3 つを取り上げます。
- PX-CSI:FlashArray、FlashBlade を Kubernetes に接続するための無償の CSI ドライバ
- Portworx Enterprise:ソフトウェア定義のストレージ(SDS:Software Defined Storage)、マイグレーション、セキュリティ、自動拡張、DR(アドオン)などの全機能を提供する中核的プロダクト
- PX-Backup:アプリケーションと PV をまとめてバックアップ/リストアするソリューション(別ライセンス)

PX-CSI は、Kubernetes 標準の CSI 仕様に準拠したドライバとして動作し、StorageClass や PVC(PersistentVolumeClaim)、VolumeSnapshot といった Kubernetes ネイティブのリソースを通じてストレージを操作します。構成するコンポーネントは、コントローラ・プラグインや各ワーカー・ノードで動作するノード・プラグインを含め、全て Kubernetes 上の Pod として動作します。ボリュームのメタデータも Kubernetes のカスタム・リソースとして管理されるため、外部のデータベースなどを別途用意する必要はありません。
Portworx 製品のラインナップやライセンスについては、こちらのブログをご覧ください。
2026.05.08 投稿者:戸田 貴夫
Portworx は、Kubernetes 向けのデータ基盤です。コンテナや KubeVirt などのモダンな仮想化向けに、ストレージ、データ保護、DR、バックアップを統合的に提供し、コンテナ時代に最適なデータ管理を実現します。
PX-CSI でできること
FlashArray、FlashBlade への直接接続
PX-CSI を導入すると、StorageClass を指定して PVC を作成するだけで、FlashArray/FlashBlade 上にボリュームが動的にプロビジョニングされ、Pod にマウントされます。既存のボリュームを Kubernetes に取り込む静的プロビジョニングにも対応しています。
- FlashArray からはブロック・ボリュームまたはファイル(NFS)、FlashBlade からはファイル(NFS)ボリュームを切り出して Pod に直接接続できる。
- FlashArray との接続は、ファイバー・チャネル(FC)や iSCSI に加えて NVMe-oF(RoCE / TCP / FC)にも対応しており、高性能が求められるアプリケーションにも適用できる。
- シン・プロビジョニング、重複排除、圧縮を含む FlashArray/FlashBlade 本来のデータ削減機能をそのまま活用できるため、コンテナ環境でも高いデータ削減率を実現する。(利用できる機能やデータ削減効果は、製品によって異なります。)

※ 上図左側の「FlashArray + PX Enterprise による SDS 構成」は、有償の Portworx Enterprise による構成です。無償の PX-CSI に該当するのは、中央または右側の「FlashArray/FlashBlade Direct Connect(CSI ドライバ)」での直接接続による構成です。
ストレージ側の運用は普段の FlashArray/FlashBlade と変わらないため、既存のストレージ運用チームにとっても導入のハードルが低い点がメリットとなります。
スナップショット、クローン、容量拡張
PVC 作成後の日常運用も、PX-CSI では Kubernetes 標準のリソース操作だけで対応可能であり、無償の範囲でカバーできます。スナップショット、クローン、容量拡張のいずれも kubectl と YAML マニフェストで完結し、ストレージ側の処理は FlashArray/FlashBlade の機能をそのまま利用するため、高速であると同時に容量効率にも優れています。
- スナップショット:VolumeSnapshotClass、VolumeSnapshot リソースで取得・復元
- クローン:既存の PVC を dataSource に指定するだけで複製を作成(FlashArray のブロック・ボリュームが対象)
- 容量拡張: PVC で使用するボリュームとファイル・システムを拡張
無償ライセンスでも大規模環境に対応
「無償ライセンス」と聞くと小規模な検証用を想像されるかもしれません。しかし、PX-CSI は、本番環境でも十分に通用する規模のスペックに対応します。
- クラスタあたり最大 1,000 ノードに対応
- クラスタあたり最大 100,000 個のボリュームを作成可能
- 単一ボリュームの最大サイズは 40 TiB、ノードあたりの最大ディスク容量は 256 TiB
- 複数の Pod からアクセス可能な共有ボリューム(RWX:ReadWriteMany)に対応
PX-CSI の無償ライセンスは、動的プロビジョニング、容量拡張、スナップショット、RWX など、コンテナ向けストレージとして日常的に必要となる機能をひととおり提供しています。
FlashArray ActiveCluster による高可用性
PX-CSI 26.1 以降では、FlashArray の ActiveCluster にも対応しています。無償で利用できる PX-CSI の範囲で、以下の高可用性構成を実現可能です。
- 2 台の FlashArray 間におけるボリュームの同期レプリケーション
- RPO(Recovery Point Objective:目標復旧時点)ゼロと自動フェイルオーバー
これらは、ストレージ・アレイの機能を最大限に活かせる PX-CSI ならではの特長です。
KubeVirt、OpenShift Virtualization の仮想マシンにも対応
PX-CSI は、コンテナだけでなく、KubeVirt や Red Hat OpenShift Virtualization で構成された仮想マシン(VM)のワークロードにも対応しています。
- VM のディスクとなるボリュームのプロビジョニング
- vTPM や共有ボリュームのサポート
- VM を停止せずに別ノードへ移行するライブ・マイグレーション
VMware からの移行などでコンテナと VM が混在するモダンな基盤を検討されている場合にも、PX-CSI が共通のストレージ・レイヤーの入り口となります。
PX-CSI の始め方
PX-CSI の導入は、Portworx Central のサイトでウィザードに沿って環境情報を入力し、生成されたインストール用の仕様(spec)を Kubernetes クラスタに適用するだけで完了します。FlashArray または FlashBlade で利用する場合には、ライセンスのアクティベーションは不要です。
インストールの手順や StorageClass の設定リファレンス、対応環境の詳細は、PX-CSI の公式ドキュメントをご覧ください。エアギャップ(インターネット非接続)環境向けのインストール手順も用意されています。
Portworx Enterprise へのステップアップ
PX-CSI は、「FlashArray/FlashBlade を Kubernetes に接続する」役割に特化して構築されており、Portworx の本来の機能であるデータサービスの多くは、有償の Portworx Enterprise で提供されています。エディション間の主な機能の違いを以下に示します。
Portworx エディション間の機能比較
|
機能 |
説明 |
PX-CSI |
Portworx Enterprise |
Portworx for Modern Virtualization |
|---|---|---|---|---|
|
最大ノード数 |
クラスタ内ノードの最大数 |
1,000 |
1,000 |
1,000 |
|
クラスタあたりのボリュームの最大数 |
単一クラスタ上のボリュームの最大数 |
100,000(Direct Access ボリューム) |
100,000 |
100,000 |
|
コンテナ・ワークロード向けストレージ |
コンテナのボリュームのプロビジョニング |
◯ |
◯ |
✕ |
|
VM ワークロード向けストレージ |
VM のボリュームのプロビジョニング |
◯ |
◯ |
◯ |
|
VM ワークロードのライブ・マイグレーション |
VM を別ノードに中断なく移行 |
◯ |
◯ |
◯ |
|
最大ボリューム容量(TiB) |
単一ボリュームの最大容量 |
40 TiB |
40 TiB |
40 TiB |
|
最大ノード・ディスク容量(TiB) |
単一ノードの最大ストレージ容量 |
256 TiB |
256 TiB |
256 TiB |
|
SDS 機能 |
SDS としてのストレージ管理 |
✕ |
◯ |
◯ |
|
共有ボリューム(RWX) |
ボリュームを他のノードと共有できるか否か |
◯ |
◯ |
◯ |
|
BYOK データ暗号化 |
データ暗号化の対象 |
✕ |
ボリューム/クラスタごと |
ボリューム/クラスタごと |
|
オブジェクト・ストアへのスナップショット (CloudSnap) |
クラウド・スナップショットを使用できるか否か(例:Amazon S3 へのボリューム・スナップショット) |
✕ |
◯ |
◯ |
|
クラスタレベルの移行 |
データ移行が可能か否か |
✕ |
◯ |
◯ |
|
災害復旧(PX-DR) |
同期/非同期 DR 機能(追加ライセンスが必要) |
✕ |
アドオン・ライセンスが必要 |
◯ |
|
容量管理の自動化 |
自動拡張が可能か否か |
✕ |
◯ |
◯ |
|
PX セキュリティ |
Kubernetes と Portworx 間のセキュアな通信 |
✕ |
◯ |
◯ |
|
VM ホスト |
ソフトウェアを VM(Amazon EC2、OpenStack Nova を含む)に導入 |
◯ |
◯ |
✕ |
Portworx の SDS と Direct Access(CSI)の機能の違い
|
カテゴリ |
FlashArray Cloud Drive |
FlashArray |
FlashBlade |
|---|---|---|---|
|
CloudSnap のサポート |
◯ |
✕ |
✕ |
|
PX-Backup のサポート |
◯ |
◯ |
◯ |
|
PX-Migrate のサポート |
◯ |
✕ |
✕ |
|
PX-DR のサポート |
◯ |
✕ |
✕ |
Portworx Enterprise へのステップアップにより、例えば次のことが可能になります。
- SDS:複数のノードや複数のストレージを 1 つのストレージ・プールに集約し、レプリカの配置やノード障害時の自動フェイルオーバーを含めて一元管理
- スナップショットの高度な運用: Kubernetes 側で一元管理されたスケジュールによる定期取得、取得前後のルール設定によるアプリケーション整合性の確保、クラウド・スナップショット(CloudSnap)のオブジェクト・ストレージへの退避
- データとコンテナのマイグレーション:ストレージ内のデータだけでなく、Deployment や Secret などの Kubernetes リソースも含めて、ネームスペース単位でクラスタ間の移行
- DR(同期/非同期レプリケーション):アドオン・ライセンスの PX-DR により、データセンター間でアプリケーションごと保護
- ストレージの自動拡張(Autopilot):利用状況に応じてボリュームやプールを自動でリサイズ
- セキュリティ機能:RBAC による認証・認可、ボリューム単位の BYOK 暗号化、ネームスペースを活用したマルチテナント
また、Kubernetes アプリケーション全体のバックアップ/リストアが必要になった場合には、別ライセンスの PX-Backup が用意されています。これらの機能の詳細は、これまでのブログ(DR 機能編、バックアップ機能編、セキュリティ機能編)でご紹介しています。あわせてご覧ください。
Portworx のデータ保護機能:Kubernetes 環境のデータを止めずに守る
2026.08.04 投稿者:安部 諒
Portworx Enterprise のデータ保護機能であるスナップショットと同期/非同期レプリケーションによるディザスタ・リカバリをご紹介します。Kubernetes 環境におけるデータ損失のリスクを低減し、障害時の迅速な復旧を実現する方法を解説します。
Portworx Backup:Kubernetes のバックアップ/リストアを一元化
2026.08.18 投稿者:安部 諒
Portworx Backup は、ストレージ内のデータと Kubernetes リソースをまとめてバックアップ/リストアし、コンテナや VM が混在する Kubernetes 環境の運用をシンプルにします。
Portworx のセキュリティ機能:認証、暗号化、マルチテナント
2026.09.01 投稿者:安部 諒
Portworx は、Kubernetes 上のストレージを安全に運用するためのさまざまなセキュリティ機能を備えています。
「まずは PX-CSI で FlashArray/FlashBlade をコンテナ基盤に接続し、 Kubernetes 側で一元管理されたスナップショットのスケジュール運用や DR、自動拡張などの要件が出てきたタイミングで Portworx Enterprise の導入を検討する」という段階的な進め方ができるのも、Portworx の強みです。同じ Portworx ファミリーの製品であるため、PX-CSI の運用で培った StorageClass や PVC 関連の知見を活かしながら Enterprise を導入できます。
※ PX-CSI 環境からの移行方式については、最新の状況を担当の営業、SE またはお付き合いのある販売パートナーにお問い合わせください。
Portworx Enterprise の全機能をお試しいただける期限付きの無償/トライアル・ライセンスもご用意しています。

まとめ
PX-CSI の主な特長とメリットは次のとおりです。
- FlashArray、FlashBlade を Kubernetes に接続する CSI ドライバを、追加費用なしで利用できる。
※ Everpure Cloud Dedicated にも対応しています。利用条件については、ご契約内容をご確認ください。 - 最大 1,000 ノード、100,000 ボリュームと、無償でありながら本番環境にも対応できるスペックを提供する。
- FlashArray のブロック・ボリュームは、FC、iSCSI、NVMe-oF による接続が可能。FA-File および FlashBlade は、NFS を利用できる。
- VolumeSnapshot によるスナップショットの取得と復元、PVC のクローン(FlashArray ブロック・ボリューム)、PVC の容量拡張に対応する。
- FlashArray の ActiveCluster による RPO ゼロの高可用性構成に対応する。
- KubeVirt、OpenShift Virtualization の VM ワークロードに対応する。
- スケジュール・スナップショット、マイグレーション、DR、自動拡張などの要件に応じて、Portworx Enterprise にステップアップできる。
既に FlashArray、FlashBlade を利用されているお客さまにおいて、PX-CSI はコンテナ環境のストレージを始めるうえで最も手軽な選択肢となります。まずは無償ライセンスを利用して、Everpure のストレージを Kubernetes に接続するところから Portworx の世界を体験してみませんか?
Everpure、Everpure のロゴ、「P」のロゴ、Pure Storage および、Everpure の商標リストに記載されているマークは、米国およびその他の国における Everpure, Inc. またはその子会社の商標または登録商標です。その他記載の全ての名称は、それぞれの権利者に帰属します。





